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新年度はきらい

2026/05/01

という方も多いのではないでしょうか。

新年度を迎えて一か月が過ぎました。しかし、「新年度はつらい」と感じている方も、多いのではないでしょうか。

春の到来と新年度の始まりは、「新たな期待と希望に満ち、意気揚々と迎える季節」と思われがちですが、すべての人がそういうわけではありません。

「木の芽どき」という言葉があります。樹木の芽が出始める時、春を意味しますが、この言葉は春を表すというより、「心身の変調をきたしやすい時期」の意味として使われることが多い言葉です。

この時期は、気候の変化と環境の変化という、二つの大きな変化が重なる時期にあたります。

私たち人間は、安定した環境、少しずつ変化する環境に適応する能力は十分に高いのですが、一方で急激な変化には思いのほか脆弱な生き物なのです。

春は日照時間が伸び体内時計(サーカディアンリズム)が乱れやすくなるため、睡眠を調整するメラトニンや気分の安定に影響するセロトニンなどが不安定になってしまいます(セロトニンは気分の安定などを保つ神経伝達物質で、その一部はメラトニンに変化し体内時計を整えるなど、お互いに関連性の高い物質です)。

加えて、気温の急速な変化により自律神経系のバランスも大きく崩れてしまいます。

ちなみに、東京の平均気温は1月は約5℃、2月は6℃、3月は9℃、4月は14℃となっています。東京だけで恐縮ですが、3月と4月で急速に気温が上がることがわかります。

こうした避けようもない自然の急速な変化の中で迎えるのが、「新年度」です。

学生であれば、進学や進級、クラス替えや担任の変更、また社会人では、部署異動や職場環境の変化など、人間関係や取り巻く環境・役割、周囲からの期待度などが一気に変わってしまいます。

これは、気象の変化以上に大きな“ストレス”となり不安・緊張を中心とした精神の変調を引き起こすことになります。

この過酷な新年度4月を、何とか“頑張って”乗り切っても、今度はいわゆる「5月病」が待ち構えています。“頑張りすぎ”て“意気込み”すぎて4月を乗り越えた反動で、エネルギー不足状態のように無気力となり、気持ちが落ち込み、疲れやすさが続く状態です。「もうムリ・・・」といった状態です。もちろん「五月病」は正式な病名ではありません。

このように、新年度が始まってしばらくは、それ以外の時期にはないような体内リズムの変化や自律神経系の乱れ、生活環境の変化が重なって「心身の不調」を起こしやすい時期が続きます。

もちろんすべての人が新年度のストレスから心身のバランスを崩し、「五月病」になってしまうというわけではありません。

しかし、「木の芽どき」や「三寒四温」「五月病」といった言葉が長く残っているということは、これまでも上に書いたような不調を多くの人たちが経験してきたということでしょう。

不調が長引く場合は医療機関を受診することも必要になります。

精神科医 野瀬 孝彦