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「入院したら退院するのが当たり前」

2024/02/26

 病院というのは入院したら退院するのが当たり前です。しかし日本の精神科はそうなっていません。職員が「退院」を口にできない病院があるとも聞きます。ベッドが空いてしまって減収となるからです。ある時点で入院している人のうち、1年以上入院している人がおよそ3分の2を占めています。ある時点で入院した人が、1年後も入院している率が12%という高値です。当院のデータはこれとは違います。是非当ホームページの「統計資料」をご覧ください。
 近年は「地域移行」という言葉が使われます。当院のあるスタッフが、退院は当たり前なのだから、「地域移行」という言葉はおかしい、と言いました。そのとおりです。私は昨年、ある市で、「なぜ退院促進が必要なのか」というテーマでの講演を依頼されて行いました(その市は実は地域サポートにとても頑張っている市です)。「地域移行」、「退院促進」などという言葉を使わなくてもよいようになって欲しいと思います。
 私たちの病院も、少ないとは言え、いろいろ工夫をしても長期にわたりなかなか退院できない人がいます。皆で知恵を絞っています。今後も努力を続けていきたいと思います。

院長 中島 直

「環境の違い」

2024/02/05

 高校を卒業して、私は東京で学生生活を送り就職をしました。就職をするにあたって、私は精神科で働きたいと思い、一つの精神科病院を訪ねました。その時に、院長先生から「例えば火事になった時あなたは病棟の鍵を開けたら真っ先に逃げてください。それができないのであれば、ここに就職はできません」と言われました。患者さんが逃げ遅れて亡くなっても、文句を言う人はいないけれど、あなたのような若い看護師さんが亡くなってはご両親に申し訳ないですからということでした。私は別のところに就職しました。

六畳一間のアパート(当然共同のトイレ、炊事場)から始まった生活の中で、私は東京というところでは心を病んでいる人たちは自然には過ごせないのだと思うようになりました。時代が違っていたというのもあるのですが、例えば午前2時に、ご飯を炊いてバタバタされたら、隣に住んでいる人はきっとたまらないだろうと思います。ですから、物理的な環境というのは、その病んでいる方たちの生活にとても大きな影響を及ぼすものなんだなと思いました。社会に復帰されていくことを考えたときに、田舎の一軒家に退院なさるんであれば、少々躁状態が治まっていなくても、退院されても大丈夫でしょうけれども、六畳一間に送り出すわけにはいかないということも考えなければいけないだろうということです。

看護部顧問 坂田 三允