備蓄米と健康
2025.06.04
5月に農林水産大臣が変わり、備蓄米がスーパーなどでも買えるようになりました。
お米が主食の私たちにとって、ふところ具合を気にせず“ご飯”が食べられることは、本当にありがたいことです。
そんな呑気なことを考えながら江戸時代の学者、貝原益軒の「養生訓」を読んでいると、“精白された白米は身体を弱くする。麦や雑穀を混ぜたほうが良い”とありました。
そうでした。白米ばかり食べていると「脚気(かっけ)」になってしまうのでした!
もっとも現代は副菜なしで白米だけを食べている人は少ないでしょうが、江戸時代は大都市「江戸」の上級武士や富裕層は白米をたらふく食べて「脚気」になり、下級武士や貧困層は麦や雑穀を食べて、「健康」だったようです。
これは「江戸わずらい」と呼ばれ、「江戸に長くいると足が立たなくなる奇病」と恐れられていました。
原因はビタミンB1欠乏症です。慢性的なアルコール依存症で発症する「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」で出現する記憶障害や幻視もビタミンB1の欠乏によるものです。
ちなみに、ビタミンB12やビタミンB9(葉酸)が欠乏すると、妄想や被害感、抑うつ状態や認知機能の低下を引き起こすといわれています。
一時的には「認知症」を疑われることもありますが、欠乏を補えば症状は改善します。
「歯ぐきからの出血」が有名な「壊血病」はビタミンCの欠乏によるものですが、ビタミンCの欠乏は、思考の混乱や感情の極端な不安定さ、不眠などの原因にもなります。
また近年は、ビタミンDとうつ病、統合失調症、更にはASDとの関係も指摘され始めています。免疫や神経伝達物質、脳内炎症にも関係しています。
ビタミンDは食べ物から摂取すると同時に、日光に当たることで体内で作られるビタミンでもあることから、日照時間の減る冬に「気分が沈む」「やる気が出ない」などの症状のある場合は、ビタミンD不足を疑う必要があるかもしれません。
しかし誤解しないでください。ビタミンはたくさん取ればよいというわけではありません。
特に「脂溶性ビタミン」と言われる、(ビタミン)A,D,E,Kは身体に蓄積されやすく、中毒症状を起こし、腎機能や神経系が障害されることもあります。
「ドラゴンボール」に出てくる仙豆(せんず)とは違います。どれほどビタミンを取っても私たちはスーパーサイヤ人にはなれないのです。
お米も食べられるようになったことですし、一番大切なことは、バランスの取れた食事をして、朝日を浴びて、睡眠をしっかりとる。
これが一番健康によいのでしょう。
それが難しいのが、現代人なのでしょうが・・・。
副院長 野瀬 孝彦