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「夏に原稿依頼を受け完成したら、ちょっと季節が」

2024.12.02

とても暑い夏でした。“猛暑”という言葉を一日に何度聞いたでしょう。そしてこの“猛暑”が原因で起こる“熱中症”も、耳にしない日がないくらいでした。
“猛暑”=“熱中症”が、普通に日常会話の話題として、場合によっては挨拶のように使われるようになってしまいました。
“熱中症”とは、高温多湿が原因で、身体の水分や塩分のバランスが崩れてしまう状態です。
更に進んで体温の調節機能が崩れてしまうと、体温が上昇した状態が続いたままになってしまいます。これはとても危険な状態です。
初期の段階では、身体から水分が減少することにより、脳や筋肉などに十分血液がいきわたらないため、めまいや立ちくらみ、手足のしびれや気分不快感といった症状が出現します。
さらに進行すると、心臓に戻る血液が少なくなり、結果的に、脳や内臓への血流も減少するため、肝臓や腎臓の機能も障害され、吐き気や嘔吐、激しい頭痛、からだに力の入らない脱力状態となり、真っすぐ歩けない状態となります。
この状態が改善されないまま続くと、更に体温が上昇し、脱水と循環不全(身体中の臓器への血流が極端に減少し、機能できなくなった状態)がさらに増悪します。体温が40℃以上に上昇してしまい、脳を含む重要臓器の機能が一層障害され、体温調節が全くできない状態となり、全身がけいれんしたり、意識がなくなる昏睡状態となることも稀ではありません。高齢者で身体の衰弱が激しかったり、身体疾患がある場合は、最悪のケースでは死に至ることもあります。

本来、人間には、少々気温が高くても、あるいは低くても、上手に順応する機能が備わっています。
それは自律神経というシステムです。
自律神経は身体中すべてに張り巡らされ、すべての臓器のバランスを保ち、ストレスや環境の変化に応じて体内環境を微調整しながら一定に維持する役割を担っています。
一言で言ってしまえば、“熱中症”の怖さは、自律神経系の働きを壊してしまい、健全に機能できない状態にしてしまうことです。

この自律神経系の障害は精神の疾患とも深いかかわりを持っています。
季節の変わり目などに精神状態が不安定になる、気分の変動が激しい、睡眠状態が極端に悪くなる、あるいは過眠となるなどは以前から知られています。
また、うつ病や統合失調症、更には認知症の症状にも自律神経系との関係が指摘されています。
パニック障害や“不安障害”では自律神経の症状が顕著に認められます。
自律神経系は心身のすべてに影響を与え、その一方で、心身の内からの、そして外からの“ストレス”に過敏に反応して症状化します。
これからの季節は、むしろ外的な環境の変化が自律神経系に対して“ストレス”となり、精神面での変調として現れることもあります。
自律神経の働きについて知っておくことは、“熱中症”だけではなく、自身の心身の安定にとってプラスに作用するでしょう。

副院長 野瀬 孝彦