ハラスメントについて
2025.07.02
今、いろいろな「ハラスメント」が問題になっています。お客さんの立場からの過度な要求が「カスタマー・ハラスメント」と言われます。病院では「ペイシェント・ハラスメント」とも言いますね。患者さんご本人からのものもありますし、ご家族など関係者からのものもあります。
患者さん等から御不満の声などが寄せられる場合、もちろん病院が正しいばかりとは言えません。私たちが考え方ややり方を改めなければならないことも、実は少なくありません。当院もいろいろなルートで検討し、改めるべきところは改めてきているつもりです。
但し、すべてにお応えできるわけでもないのも、またご理解いただきたいところです。寄せられるご要望は人手があれば解決できるものが多いですが、それには人件費がかかります。病院は診療報酬で収入が細かく規定されており、営業努力などで増収を図ることには限界があります。むやみに人を増やすことができません。また、熟練した専門家には限りがあり、たやすく採用できるわけではないことも加わります。健康保険にはいろいろ不合理な制約もあって、求められた医療を行うことが医学的には妥当と考えられてもそれができないこともあります。
また、医療でできることについての理解が、ご本人やご家族と私たちとの間で差があり、そこが問題になることもあります。
実は、夜間や休日など、人が少ないときに、電話や対面で、患者さんやご家族から職員に、長時間のお話をされることが少なくなく、病院の大きな負担になっています。繰り返すように、私たちの対応に問題があり、当然のご要望のこともあります。しかし、そうではないこともあります。一般企業でカスタマーセンターのようなところがあるところもありますが、そういうところは多くは電話受付時間が平日日中ですし、電話をしても「ただいま電話が大変混み合っております・・・」となって待たされることがしばしばです。しかし、病院は、急を要する患者さんがいらっしゃるので、電話の24時間対応は当たり前で、職員も24時間誰かはおりますので、「逃げられない」立場にあります。このあたりも問題を複雑にしていると感じます。
さらに問題なのは精神科に固有の事柄です。特に患者さんご本人が、コミュニケーションに苦手な部分があることがあります。この場合は病院としてはそれに時間をとって対応することが求められると思いますが、大声、威圧などが加わって、ハラスメント類似の問題に至ることもあります。最近でも病院内での暴力が問題になっており、病院内はもとよりどこであっても暴力が許されないことは確かですが、暴力自体が症状である患者さんがいらっしゃることもまた事実で、これは「ハラスメント」として扱うよりも治療の対象としてみなさなければならないこともあります。こうした見極めを、私たちは日々求められています。
いずれにしても、なるべく良好な関係のもと、最善の医療を行い、患者さん、ご家族に満足いただける結果に導くことが最良であることは論を待ちません。当方も努力しているつもりですが、不充分な点についてはお聞きして改める用意があります。患者さん、ご家族の皆様におかれましても、病院の事情をご理解いただきますよう、この場を借りてお願いいたします。
院長 中島 直