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十三月さん

2023.10.31

砂かけ婆のわたくし坂田が精神科看護に携わってもう50余年が過ぎました。叔母が躁うつ病でしたので、心を病む人との関りは生まれたときからです。50余年の間に精神科はずいぶん変わりました。あんなこと、こんなこと、いろいろありました。悩んだことがないわけではありませんが、圧倒的に楽しいことの方が多かったなと思っています。思い出すままに、あんなことやこんなことを、ちょこっと書き綴ってみようかなと思います。

私が生まれたのは戦後(第二次世界大戦)間もなく、富山の「ど」がつくほどの田舎です。我が家が所属する集落には18軒の家しかなく、そんなに小さな村であっても、精神障害の方がいらっしゃいまして、私たちは当時その方たちを十三月さんと呼んでいました。十三月というのは太陰暦で13番目の月がある年を意味します。心を病んでいらっしゃる方たちは、その13月のある年は調子を崩すという言い伝えがありました。「今年は13月だから、絶対にあの人は具合が悪くなるぞ」ということがささやかれ、その人の家族はもちろん周囲の人々もその人を注意深く見守るのです。その当時は健康保険もありませんでしたし、病院そのものがほとんどなかったので、どんな方でも家で面倒見るのが当たり前でした。生活の中に十三月さんは普通にいらっしゃったのです。

看護部顧問    坂田三允