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時間は誰にも平等に与えられる(暇をつぶすのは難しい)

2024.12.20

その後、私は転換性障害の患者さんに出会いました。その方と出会ったことは、私にとってとても意味深いことでした。外来通院時に、私のところに寄って1時間ぐらい話をしていくことが彼女の日課に入っていたらしく、そういう生活がずっと続いていたのですけれど、そのときに彼女は「ごめんね、暇つぶしの相手をさせて」というふうに言っておりました。そのときは「暇つぶしねえ・・・」と多少の不満があったのですが、暇をつぶすというのは人間にとってとても重要な問題なのだということを後になって知ることになりました。
人間は24時間という時間を平等に与えられています。私たちは24時間あっても足りないと思う様なときもあると思います。でも、何もすることがない、アパートに1人で退院した患者さんは24時間をつぶすことができません。ご飯を準備して、食べて寝る時間を引いても、かなりたくさん時間が残ってしまいます。例えばデイケアに通うとか作業所に通うなど、何かすることがあればよいのですが、そうでないとほんとうに一人ぼっちで、訪問販売にだまされてしまうのです。訪問販売の人はお話がとても上手です。とにかく相手の話をよく聞く。ある日、看護師が訪問すると、患者さんの六畳一間に立派な掃除機が置いてありました。「どうしたの」「買った」「幾ら」「48万」「どうするの」「1万円のローン」「あなたの収入は障害年金が月これだけ。アパート代がこれだけで1万円払ったらどうなる」「払えないね」ということは説明すればわかってもらえて、今度は契約する前に教えてと言ってきたにもかかわらず、2週間後に行ってみたら、52万もする電磁治療器とかいうものがありました。
そのとき患者さんが言ったのは「ほんとにいい人だったんだよ。いっぱい聞いてくれて」ということだったそうです。通院日や訪問看護が入る日以外ずっと1人でいたら、やっぱり誰かと話したくなるだろうなと思います。退院を考えるときには暇をつぶすことも含めてきちんと考えていかなければならないと思いました。

看護部顧問 坂田 三允