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差別と偏見 (中絶に決まっています) 

2024.05.13

そして、昭和40年代が終わるころ私は田舎に帰り、単科の精神科病院に就職しました。

ちょっとした事件がありました。統合失調症の方が妊娠されたのです。ご主人も統合失調症でした。そのとき院長から看護師全員に「どうすればいいと思う?」という質問がありました。私は、家族の方がサポートできて、ご本人が産みたいと思ってるんだったら産むべきだし、サポートが全く望めないとしたら無理かもしれないと思っていたのですが、「中絶に決まってます」とある看護師さんが言いました。その方はずっと長く村の保健婦さんとして活躍していらした方なのですけれど、その方がそんなふうにおっしゃって、驚きました。

昭和15年にできた国民優生法(ドイツのナチスの断種法と同じように、「劣悪な遺伝子を持っている人たちの中絶と不妊手術はすぐにしましょう」というような法律)でその劣悪な遺伝子の中では精神病および病的性格が第一に書かれていました。村で優秀なだった保健師さんの頭の中には、精神病院に入院しているような人の遺伝子は残してはならないということがしっかり刻み込まれていたのだと思います。

看護部顧問 坂田 三允